実家の片付けで、たんすの引き出しを開けたら着物が何枚も出てきた。畳紙に包まれたまま、何十年も動いていない。よくあるご相談です。
「もう誰も着ないので」。この一言のあと、たいてい少し間があきます。捨てるのも気が引ける、かといって着る人もいない。先に申し上げると、見るのは証紙・落款・素材・仕立て・保管状態の五つです。処分の袋に入れて口を閉じる前に、一度見せていただくことがあります。
先に結論
着物は、証紙・落款・素材・保管状態で見るところが変わります。見るのは証紙・落款・素材・仕立て・保管状態の五つです。証紙は畳紙や帯と一緒にしまわれていることが多いので、先に探してください。シミがある、証紙がない、というだけで判断材料が尽きたわけではありません。そのままの状態で見せていただくのがいちばんです。
この記事で確認できること
- 着物で見る五つ(証紙・落款・素材・仕立て・保管状態)
- 保管状態で気をつけたいところ
- 証紙が見つからない場合の考え方
- 傷んだ着物や古布の行き先
- 査定前にやらない方がよいこと
まず探すのは、証紙
証紙は、産地や織元、素材を示す小さな紙や布です。反物のときに付いていたもので、仕立てたあとは畳紙の中や、たとう紙の隅、帯と一緒の引き出しに残っています。
これがあると、確かめられることがぐっと増えます。着物だけを取り出して、証紙のほうを捨ててしまうのがいちばんもったいない形です。
- 畳紙(たとうし)の中。紙の内側に貼り付けてあるものもあります
- 帯や小物と同じ引き出しに、まとめてしまわれている場合
- 桐たんすの一番下の段、あるいは別の箱に分けてあるもの
- 購入時の袋や外箱に、値札と一緒に残っていたという例もあります
証紙が見つからないときに見るところ
証紙が見つからないこともあります。その場合は、ほかのところを見ます。
証紙が無いときは、落款・生地・仕立ての三つを見ます。
| 見るところ | 確認したいこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 落款・印 | 裾や衿の裏の小さな印 | こすらない。読めないままで構わない |
| 生地 | 手触り、光沢、裏地の状態 | 強く引っ張らない |
| 仕立て | 手縫いかどうか、寸法 | ほどかない |
読み取れない文字は、読めないままで結構です。無理に判断しようとせず、写真に残しておけば、あとから確かめられます。
保管状態で見るところ
長くしまわれていた着物には、たいてい何かしらの傷みがあります。黄ばみ、カビ、虫食い、たたみジワ。これは避けられません。桐たんすを開けたときに、樟脳の匂いと一緒に薄く黄ばんだ畳紙が出てくる。実際にお伺いすると、たいていその状態です。
大事なのは、傷んでいるかどうかではなく、どこがどう傷んでいるかです。衿元や袖口の汚れ、裏地だけの変色、シミの位置。同じ「シミがある」でも、見え方は変わります。
スタッフのひとこと
「シミがあるから、もう見てもらうまでもないですよね」と先におっしゃる方がいらっしゃいます。そこで話が終わってしまうのが、いちばん惜しいところです。判断するのはこちらの仕事ですので、状態のことは気になさらずお声がけください。
傷んだ着物や古布にも、行き先がある
見え方が変わるのは、状態だけではありません。着るための着物として見るか、布として見るかでも変わります。
着物の記事の多くは、正絹の作家物や、状態のよい訪問着の話に寄っています。ですが実家整理で出てくるのは、もっと生活に近いものです。仕立て直しの途中で止まったもの、洗い張りしたままの反物、木綿の普段着、はぎれ。
こうしたものにも、探している方がいます。私たちがお預かりした中にも、古布・藍染・木綿の着物や古裂があります。着るための着物としてではなく、布として見ている方がいる、ということです。
布おむつやはぎれのように、いまでは使わなくなった古い布をお預かりした記録もあります。「これは布きれだから」と袋にまとめてしまう前に、一度お声がけください。
着物や布は、ご自身の判断でゴミに回されやすいものです。畳んだまま何十年も動いていないと、なおさら見当がつきません。
査定前にやらない方がよいこと
きれいにしてから見せたい、というお気持ちはよく分かります。ただ、着物に関しては手を入れるほど不利になる場面があります。
- 自分で洗う、水につける
- シミ抜き剤や漂白剤を使う
- アイロンを直接当てる
- ほどく、寸法を直す
- 証紙や畳紙を先に処分する
正絹は水に弱く、家庭での手入れで縮んだり色が動いたりします。そのままの状態で見せていただくのが、結局いちばん確実です。
写真とメモは三つだけ
遠方の方や、まず相談だけしたいという方は、写真を送っていただければ話を始められます。
枚数が多い場合は、一枚ずつ撮らなくて構いません。たんすの引き出しを開けた状態を撮っていただくだけでも、量と種類が分かります。お電話でも、その1枚があると話が早く進みます。
たんす一棹ぶんでも、そのまま拝見します。富山・石川が対応エリアで、現地にお伺いしてのお見積もりに費用はいただきません。対応エリアの外は、事前に写真のやり取りとお伺いのうえで、伺えるかを判断しています。買取できるものがなかった場合でも、出張料など費用が発生することはありません。
よくいただくご質問
枚数が多く、たんすごとという状態でも相談できるか
はい。むしろまとめて見せていただくほうが早い場合があります。一枚ずつ分けていただく必要はありません。
虫食いやカビがひどいものも、一緒に出してよいか
出していただいて構いません。傷みの程度は現物を見ないと分かりませんし、同じたんすの中に状態のよいものが混じっている場合もあります。仕分けはこちらでします。
帯や和装小物だけでも見てもらえるか
はい、帯や小物だけでも構いません。帯には証紙が一緒にしまわれていることがありますので、引き出しごと見せていただけると早いです。
まとめ
着物で見るのは、証紙・落款・素材・仕立て・保管状態の五つです。証紙は畳紙や帯と一緒にあることが多いので、先に探してください。
そして、傷んでいるもの、はぎれになったものにも行き先があります。「もう着ないから」で決める前に、全体と証紙の2枚、ひとことメモを添えてお送りください。たんすを閉める前で構いません。






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