形見分けのご相談で最初に伺うのは、たいてい時期のことです。「四十九日を過ぎたら、でいいんでしょうか」。落ち着いた声で、けれど少し急いだ様子で、そう聞かれます。
結論からお伝えすると、忌明けのあとが一つの目安です。ただ、日にちよりも大事なことが別にあります。私たちが実家の片付けでお伺いすると、形見分けが済んだあとの「残ったもの」で手が止まっているお宅にたびたび行き当たります。
先に結論
形見分けの時期は忌明けのあとが目安で、宗派によって日数が変わります。ただ、日にちを守ることより、集まれる日に合わせるほうが実際的です。そして、分け終わったあとに残る品物こそ、まとめて処分する前に一度見ていただきたいところです。
この記事で確認できること
- 形見分けを行う時期の目安と、宗派による違い
- 誰に分けるか、範囲をどう考えるか
- 親族間で揉めないための進め方
- 分けたあとに残った品物の扱い
- 判断に迷ったときの相談のしかた
形見分けの時期は「忌明けのあと」が目安
形見分けは、故人が使っていた品物を親族や親しかった方へ引き継ぐ習わしです。時期に決まった法律はありませんが、忌明けの法要を終えたあとに行うのが一般的とされています。
節目になる法要は、宗教によって次のように違います。
- 仏式は四十九日法要(忌明け)のあと。亡くなってから約49日後が目安です
- 神式は五十日祭のあと。約50日後にあたります
- キリスト教は一か月後の追悼ミサや召天記念日が節目になります
浄土真宗のように忌明けの考え方が異なる宗派もあります。日数の数え方は地域でも違いますので、菩提寺やご親族に一度確かめてください。
ただ、実際にお伺いしていて思うのは、日にちそのものより「集まれる日」のほうが大事だということです。遠方のご親族が来られる日に合わせて前後する。それで構いません。
スタッフのひとこと
「四十九日にきちんとやらないと失礼にあたるのでは」と気にされる方がいらっしゃいます。ですが、慌てて分けて、あとから「あれは誰が持っていったんだったか」と分からなくなるほうが、ご家族にとってはつらいことです。人がそろう日を選んでください。
誰に分けるか、範囲をどう決めるか
基本になるのは、ご遺族と、故人が生前に親しくしていた方です。兄弟姉妹、お子さんやお孫さん、長く付き合いのあったご友人。ここまでは自然に決まることが多いと思います。
迷いやすいのは、その外側です。介護でお世話になった方、近所で長く声をかけてくださった方。範囲を広げるかどうかは、故人がその方をどう呼んでいたかを思い出すのが、一つの手がかりになります。
介護でお世話になった方やご近所の方は、話し合いの中で名前が挙がりにくいところです。範囲を決めるときに、一度思い出してみてください。
範囲を決めたら、声をかける前に一度リストにしてください。口約束が重なると、同じ品物を二人に伝えていた、ということが起こります。
揉めないための順番は「意思の確認」から
形見分けでご相談が多いのは、品物そのものより順番のことです。順番を間違えると、あとから気持ちのしこりが残ります。
包み方やお返しの要否は、地域やご家庭で考え方が違います。菩提寺やご親族に一度確かめてください。遠方の方へ送る場合、壊れやすいものは緩衝材でしっかり包んでおくと安心です。
形見分けは贈り物ではなく故人を偲ぶためのものなので、お返しを前提としない考え方が一般的です。ただし、この考え方が当てはまらない品物があります。値打ちのあるものです。
相続にかかわる品物は、分ける前に確かめる
気をつけたいのは、財産にあたる品物です。貴金属や美術品、まとまった価値のあるものは、形見分けと相続の話が重なります。
分けたあとで「あれは相続財産だったのでは」と話が戻ると、ご家族の関係に響きます。価値がありそうなものは、ご親族の話し合いが済むまで一度保留にしてください。分けたあとで戻すほうが、手間になります。
相続の手続きや税金の扱いについては、私たちからお答えできません。税理士や司法書士など、専門家にご確認ください。
分け終わったあとに残る品物をどうするか
形見分けの相談で、いちばん多く手が止まるのはこの先です。
形見分けは「誰かが引き取るもの」を決める作業です。ですから、終わったあとには必ず「誰も引き取らなかったもの」が残ります。押し入れに戻された箱、まとめて紙袋に入れられた小物。
そして、そのまま処分に回されます。ここで一度、手を止めていただきたいのです。ご家族が「もう値打ちはない」と判断してまとめられた袋から、確かめたい品物が出てくることがあります。
- 桐箱や紙箱に入ったまま、中を見ていないもの
- 古びていて、値打ちがなさそうに見えるもの
- 鑑定書や書付だけが、別の引き出しから出てきたもの
- 何に使うのか分からない金具や道具
- 一式そろっているのに、ばらして分けようとしているもの
とくに箱と書付は、品物と離さないでください。箱や鑑定書がどう効くかは、私たちが別の記事にまとめています。箱だけ物置、品物だけ仏間、という状態でお預かりすることが本当によくあります。
指輪やネックレスも、形見分けで残りやすいものの一つです。私たちがお預かりした中にも、本真珠のネックレスがありました。糸が緩んでいても、留め具が古びていても、それだけで判断が終わるわけではありません。
見るところは品物ごとに違います。指輪やネックレスはこちらの記事にまとめました。
迷ったら、捨てる前に写真を1枚
「これは値打ちがあるのか」を、その場で判断していただく必要はありません。判断するのが私たちの仕事です。
お手元でしていただきたいのは、写真を撮ることだけです。全体を1枚、箱や書付があればそれも1枚。それだけで、こちらからお伝えできることが変わります。
残ったものをまとめてご覧いただくご依頼も承っています。富山・石川が対応エリアで、現地にお伺いしてのお見積もりに費用はいただきません。対応エリアの外は、事前に写真のやり取りとお伺いのうえで、伺えるかを判断しています。買取できるものがなかった場合でも、出張料など費用が発生することはありません。
お部屋の広さごとの料金の目安は、遺品整理の専門サイトに掲載しています。記事の上で相場をお示しすることはできませんので、こちらをご覧ください。
形見分けは、故人との時間をもう一度たどる作業でもあります。急がず、人がそろう日に。そして残ったものは、手を止めたところで一度ご相談ください。
スタッフのひとこと
形見分けのあと、押し入れに戻された箱の前で「これ、どうしましょう」と手が止まる。お伺いした先で、いちばんよく立ち会う場面です。急いで決めなくて構いません。私たちが見るところは、そのためにあります。
よくいただくご質問
現金や商品券を形見分けとして渡してもよいか
現金や金券は形見分けにはなじまないとされています。故人が使っていた品物を引き継ぐ、というのが形見分けの成り立ちだからです。まとまったお金が関わる場合は相続の話になりますので、そちらの手続きとして進めてください。
受け取れない事情があるとき、どう断るか
遠方で持ち帰れない、保管する場所がない。そうした事情は珍しくありません。理由を添えて早めにお伝えいただくのがいちばん角が立ちません。無理に受け取って持て余すほうが、故人の品物にとっても本意ではないと思います。
誰も引き取り手がない品物は、最後にどうするか
「うちには置く場所がなくて」。話し合いの終わりに、この言葉で全員が黙ってしまうことがあります。
処分が必要なものは、必要な許可を持つ業者にお願いすることになります。ただ、袋の口を閉じる前に一度見せていただけると、あとから困りません。箱や書付だけが別の引き出しから出てくることがあるためです。






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