親の生前整理は、片付けの話に見えて、実際は話の切り出し方でほとんど決まります。
ご相談のお電話で、こう言われることがあります。「片付けようって言うと、決まって不機嫌になるんです」。実家の居間で、お茶を出されたまま話が止まってしまう。私たちがお伺いすると、そういう場面に行き当たります。
先に結論
親の生前整理は、順番を守ることより、親子で同じ話を見ている状態を作るほうが先です。書類から手をつけ、思い出の品は後ろに回す。そして判断が分かれた品物は、その場で決めずに保留にしてください。見た目だけでは分からないものがあります。
この記事で確認できること
- 家族と一緒に進めると、何が変わるか
- 親に切り出すときの言い方
- 先に手をつける順番
- 「これは価値がある」と言われた品物の扱い
- 手が足りないときにお願いできること
一人でやらせないほうが、結果として早い
生前整理をご本人だけに任せると、たいてい止まります。理由は単純ではありません。体力の問題もありますが、それ以上に「何を残すか」をひとりで決めるという作業が、思っている以上に重いからです。決めるたびに、その品物にまつわる時間を思い出すことになります。疲れます。
家族が一緒にいると、その重さが分かれます。「これ、覚えてる?」から話が始まって、気がつけば箱が一つ片づいている。実際にお伺いした先で、私たちはその場面を何度も見ています。
もう一つ、一緒にやる効き目があります。どこに何があるかを、家族が知っている状態になることです。これは後々、ご家族を助けます。
切り出し方は「自分から始める」が通りやすい
「片付けよう」と言うと、たいてい断られます。言われた側からすれば、自分の暮らしを否定されたように聞こえるからです。
子ども自身が先に始めるのが、いちばん角が立ちません。自分の家の押し入れを片付けた話をする。それだけで、話題として持ち出しやすくなります。
急がせないこと、勝手に処分しないこと。この二つを守るだけで、話が続く確率がかなり変わります。
スタッフのひとこと
「勝手に触らないで」。片付けのご相談では、この一言をよく耳にします。良かれと思って先に少し片付けておいた、という話とセットで出てくることが多いところです。悪気がないのは分かっていても、断りなく動かされるのはこたえます。一声かけてから、が結局は近道です。
手をつける順番は、書類から
どこから始めるか迷ったら、書類からにしてください。思い出の品から始めると、一枚の写真で1時間が過ぎます。
書類の置き場所が決まるだけで、ご家族の安心はかなり変わります。入院や施設への入居が急に決まったとき、探すところから始めずに済むからです。
「これは価値がある」と言われたとき
先ほど最後に回した「値打ちが分からないもの」をめぐって、親子の意見が割れます。親御さんが「これは値打ちのあるものだ」とおっしゃり、お子さんは「そうは見えない」と思う。逆に、子ども側が捨てようとしたものを、親御さんが止める。どちらもよくあります。
このとき、どちらかを説き伏せる必要はありません。その場で決めずに、保留の箱を一つ作ってください。
見た目で判断が難しいものは、確かにあります。私たちがお伺いして、処分の側にまとめられた箱を開けることも珍しくありません。
- 桐箱に入ったまま、何年も開けていない品物
- 古い指輪やネックレス。石が取れていても、地金は残っています
- 着物や帯。証紙が別の場所にあることがあります
- 使い道の分からない道具や金具
- 箱と中身がばらばらになっているもの
たとえば、古くなった銀盃が黒く変色して、そのままゴミ袋に入っていたことがあります。長く使わないうちに色が変わると、値打ちのないものに見えてしまうのです。当店には南部鉄瓶や茶道具をお預かりした記録もあります。茶道具は本体と箱が別の場所にしまわれていることがありますので、両方をそろえて見せていただけると確かめられることが増えます。
見るところは品物ごとに違います。指輪やネックレス、箱や鑑定書といった付属品については、それぞれ別の記事にまとめました。品物と箱を離さないでいただくだけで、確かめられることが増えます。
手が足りないときに、お願いできること
親子だけで進めるには量が多すぎる、というお宅もあります。二階の荷物が下ろせない。蔵の戸が固くて開かない。実際にお電話でいただくのは、こういう具体的な行き詰まりです。
「一部屋だけ手伝ってもらえますか」。そういうご依頼もあります。全部お任せいただく必要はありません。
私たちがお伺いする場合、まず見せていただいて、買取やお引き取りについてご相談できるものと、処分が必要なものを分けます。処分が必要なものは、必要な許可を持つ業者にお願いする形になります。
一部屋だけ、蔵だけ、というご依頼でも構いません。富山・石川が対応エリアで、現地にお伺いしてのお見積もりに費用はいただきません。対応エリアの外は、事前に写真のやり取りとお伺いのうえで、伺えるかを判断しています。買取できるものがなかった場合でも、出張料など費用が発生することはありません。
なお、相続税や贈与税については私たちからお答えできません。金額の大きいものが出てきたときは、税理士に確認していただくのが確実です。
お部屋の広さごとの料金の目安は、遺品整理の専門サイトに掲載しています。記事の上で相場をお示しすることはできませんので、こちらをご覧ください。
よくいただくご質問
親が「絶対に捨てない」と言うものは、どう扱うか
そのまま残してください。生前整理の目的は物を減らすことではなく、ご本人が納得した状態を作ることです。数を減らせなかった日も、話ができたなら前に進んでいます。
実家が遠方で、頻繁には帰れない
帰省のたびに一部屋ずつ、と決めておくと進みます。間の期間は、写真を送ってもらって相談する形でも構いません。私たちも、写真からお話を始めることがよくあります。
勝手に捨ててしまい、関係が悪くなった
まず謝って、そのあとは急がないことです。信頼が戻る前に次の片付けを持ち出すと、話がこじれます。時間を置いて、今度は「一緒に見る」ところからやり直してください。
まとめ
親の生前整理は、片付けの技術より、同じ話を見ている時間が要る作業です。書類から始めて、思い出の品は後ろに。そして判断が分かれたものは、保留の箱へ。
その保留の箱を開ける日が来たら、ふたを開けた状態を1枚。そこから話を始められます。






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