古くて傷んだ骨董品|査定で見ている時代・銘・共箱の確認ポイント

「これはもう、見るまでもないですよね」。新聞紙にくるまれた茶碗を開いて、ヒビと汚れを見つけたご家族が、そっと脇へ寄せる。蔵の整理や空き家の片付けで、こういう場面に出会うことがあります。

その一点を、あらためて拝見させてくださいとお願いすることがあります。見るのは、きれいかどうかより先に、時代・銘・共箱・保存状態の4つです。骨董の物差しは、ふだんの中古品の物差しとは目盛りが違います。リサイクルショップバイキングのスタッフです。

先に結論
査定では、きれいかどうかより先に、時代・銘・共箱・保存状態の4つを見ています。傷や汚れがあることと、評価できないことは、同じ意味ではありません。処分の山に分ける前に、そのままの状態で一度お見せください。

目次

骨董の物差しは、中古品の物差しと違う

一般的な中古品は、新品に近いほど評価が上がります。骨董は、そこが違います。

長く使われることで生まれた色味の変化、木の艶、陶器の貫入と呼ばれる細かなひび模様。これらは、その品が時代を越えてきた証として見られます。茶碗の口縁の擦れ、箪笥の金具の摩耗、掛軸の折れ。単なる劣化ではなく、実際に使われてきた記録です。

逆に言えば、洗ったり磨いたりしてその記録を消してしまうと、確かめる手がかりが減ります。では、そのままの状態から何を読み取っているのか。順番にご説明します。

査定で最初に確かめる4つ

拝見するときに、順番に確かめていくのは次の4点です。

  • 時代:いつ頃つくられたものか。土や釉薬、作りから見当を付けます
  • 銘・作者:底や蓋裏の刻印、窯の印、箱書きの署名
  • 共箱・付属品:作者が箱書きをした箱、鑑定書、由来を記した紙
  • 保存状態:割れや欠損か、自然な経年変化か、後から手が入っているか

4つが揃っていなくても拝見します。箱が無いままお預かりすることもあります。ただ、揃っているほど、話せることが増えます。

時代は、土と釉薬と作りに出る

「これ、いつ頃のものですか」。そう聞かれることがあります。年号が書かれている品はまれですから、手がかりは品物そのものから拾います。

陶磁器なら、高台の削り跡。ろくろの回し方も削りに使う道具も時代によって変わるので、器をひっくり返して底の削り目を見るだけで、どのあたりの時代のものかおおよその見当が付きます。釉薬の縮れ方や貫入の入り方も同じです。木の家具なら、釘か木釘か、金具の作りが手打ちか量産かを見ます。金属なら、鋳肌の粗さと表面の酸化の進み方。

ここは一点だけで決めません。土と釉薬と作りが、同じ時代を指しているかどうか。噛み合わないときは、あらためて調べ直します。

銘は、思わぬところに入っている

無名に見える茶碗の高台の内側に、小さく銘が入っていることがあります。急須なら蓋の裏。鉄瓶なら底や胴。箪笥なら引き出しを抜いた奥の板。

そして、本体には何も無くても、箱の内側に筆で書かれている場合があります。共箱は、その品の身分証のような役割を果たします。ですから、箱が汚れていても、蓋が割れていても、捨てないでお持ちください。

ここは無理に探していただかなくて構いません。ひっくり返す作業でぶつけてしまうほうが心配です。

スタッフのひとこと
「こんな汚いもの、恥ずかしくて」。そう前置きしてから品物を出される方がいらっしゃいます。汚れているかどうかは、こちらにとって恥ずかしいことでも何でもありません。汚れの下に何が残っているかを見るのが、この仕事です。

共箱は、本体と別に読む

3つ目に挙げた共箱は、本体とは別の情報源として扱います。

見るのは、箱書きの署名と、その筆跡が中身と噛み合っているか。二重箱になっていれば、外箱と内箱のどちらに書かれているか。紐や紙札が当時のものかどうか。箱だけ後から取り合わせたものが混じることもあるので、箱と本体はセットで確かめます。

ですから、箱を「ただの入れ物」として先に処分しないでください。中身より箱のほうが語ることもあります。

割れと経年変化は、分けて見る

4つ目の保存状態は、良い悪いの一本の物差しでは見ません。

割れ、欠け、大きな欠損は減点として数えます。一方で、貫入や擦れ、金具のくすみは、時代を経た証として受け止めます。難しいのはその中間で、後から手が入っているかどうか。接着剤の跡や、不自然に新しい部分があると、そこで判断が止まります。

どこを見て決めたか|お預かりした3点

以前お預かりした時代箪笥の話をさせてください。使われた跡の残った箪笥を、そのままの姿で探している方がいます。直された家具ではなく、当時のままが求められる。そういう分野があるので、経年による傷や色の変化も、この分野では味として見られます。ですから、落とさずにそのまま拝見しました。この箪笥の全体の様子は、買取事例のページに写真で残しています。

ほかの3点も、確かめた場所を書き残してあります。

どれも、時代や作り手、付属品を確かめたうえでお預かりしています。見た目がきれいだったからではありません。

とはいえ、古ければ何でもいいわけではありません。数が出た量産品や、近年の観光地の土産物は、正直なところ伸びにくい分野です。ただし窯や年代で話は変わりますので、見分けはこちらでします。「たぶん量産品だろう」というご自身の見立てで先に処分してしまうと、確かめる機会そのものが無くなります。

骨董品・古美術品の査定について

掛け軸・陶磁器・茶道具などの査定で見るポイントは、骨董品買取の専門サイトで詳しくご案内しています。ご相談・出張査定は無料です。

手を入れると消えてしまう3つ

ここまでお読みいただくと、なぜ「そのまま」をお願いしているかが伝わるかと思います。時代も、銘も、共箱の書きつけも、品物の表面と付属品に残っています。手を入れると、その材料から消えていきます。ですから、お手入れをしていただく必要はありません。むしろ、次の3つは控えていただけると助かります。

注意 01洗う・磨く。風合いも時代の跡も、落とすと戻りません
注意 02接着剤でくっつける。破片は袋にまとめて、そのまま一緒にお持ちください
注意 03箱や紙札を先に処分する。本体より箱に情報が残っていることがあります

磨いたあとで戻せないのは、金属の表面と漆です。素材ごとに何が起きるかは、美術品を売る前の“やりすぎNG”集に書きました。布を手に取る前に、その品目のところだけでも読んでみてください。

よくいただく質問

割れている器でも持っていっていいですか

そのままお持ちください。破片が残っていれば、袋に入れて一緒にお持ちください。割れの状態も含めて拝見してから、お話しします。

箱が無いのですが、意味がないでしょうか

そんなことはありません。箱があると確かめられることが増える、というだけです。本体だけでも拝見します。

蔵にまとめて残っていて、量が多すぎます

1点ずつ選別していただく必要はありません。棚ごと、箱ごとの写真を送っていただければ、伺い方をご相談できます。富山・石川を中心に出張でのご相談をお受けしています。

その場で金額は分かりますか

その場でお伝えできることと、持ち帰って調べたいことが混ざります。窯や年代の見当が付く品なら、その場で。箱書きの署名を読み解く必要があるものは、日をあらためてご連絡します。

脇に寄せる前に、一度だけ

ヒビの入った茶碗を脇へ寄せた、あの手を止めていただきたいのです。汚れているから、欠けているから、古いだけで値打ちはなさそうだからと、片付けの途中で数秒のうちに下される判断のなかに、確かめておきたかった一点が混じっていることがあります。

そこに置かれた理由まではもう聞けないまま、片付ける側の判断だけで行き先が決まっていきます。

脇に寄せた一点だけでも、写真で見せてください。新聞紙にくるんだままで結構です。蔵にまとめて残っているようなら、棚ごと一枚撮っていただければ、伺い方からご相談します。

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この記事を書いた人

富山・石川を中心に、古物買取や遺品整理、空き家整理などの仕事に20年以上携わっています。

質屋での勤務経験もあり、これまで貴金属・時計・骨董品・昭和レトロ品など、さまざまな品物を見てきました。

「これって売れるの?」
「古いけど価値はある?」
「捨てても大丈夫かな?」

そんな身近な疑問に、古物・骨董品バイヤーとしての経験をもとに、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

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