こんにちは。リサイクルショップバイキングのスタッフです。富山・石川で、骨董品や古道具の査定を続けてきました。
お品物を拝見しに伺うと、几帳面に仕分けられていることがあります。茶碗はこちら、棗はあちら、よく分からないものは処分の山へ。せっかく整理していただいたのに、こう申し上げることがあります。「その分け方、いったん戻していただけますか」。
一点ずつのほうが有利だと考えて、ばらしてしまう。もったいない場面です。骨董には、まとまっているほうが見やすくなるものがあります。
先に結論
茶道具・古民具・古陶器は、同じ家から出たものをまとめたままお見せください。ばらすと、時代や使われ方といった背景が読み取りにくくなります。分けたほうがよいものもありますが、その判断はこちらでいたします。まずはそのままで。
まとまっていると、何が変わるのか
私たちが品物を見るとき、その一点だけを見ているわけではありません。どの家から、どんな状態で、何と一緒に出てきたのか。そこまで含めて見ています。
茶碗が一つだけ置かれている場合と、棗や建水や蓋置と一緒に箱へ納まっている場合。伝わる情報量がまるで違います。後者なら、この家でお茶を点てていた時間が見えてきます。時代の見当もつきます。
古民具も同じです。一点だけだと用途が限られますが、同じ蔵から出た道具がまとまっていると、その頃の暮らしが立ち上がってきます。「どうせ古いだけの道具でしょう」と思いますよね。そう思われがちなものほど、揃いで見ると印象が変わります。
ここからは、茶道具・古民具・古陶器の順に、まとまりの何を見ているのかをお話しします。
茶道具は、名前が分からなくてもそのままで
茶道具は、実家の棚や茶箪笥からまとまって出てくることが多いお品物です。茶碗、棗、香合、茶杓、建水、蓋置、花入。名前の分からないものが混ざっているのが普通です。それで構いません。
そこで「よく分からないものは処分しよう」と考えてしまう。ここが分かれ目です。分からないまま、まとめてお見せください。判別はこちらの仕事ですから、名前が付いていなくても、用途が思い当たらなくても、そのままで結構です。
箱・仕覆・書付は、必ず一緒に
茶道具でいちばんお願いしたいのが、付属品を離さないことです。共箱、仕覆、書付、栞。一組で見せていただければ十分です。箱に作者名や銘が書かれていることもありますが、それ以上に、箱と本体が揃っていること自体に意味があります。
茶碗だけを取り出して別の場所にしまっていると、その結びつきが切れてしまいます。押し入れの上の段に箱、下の段に本体。よくあります。「箱はもう捨てたかもしれません」とおっしゃる方もいますが、蔵や物置の棚に残っていることがあります。探すのは骨が折れますが、箱が出てくると、こちらが確かめられることの数がはっきり増えます。
古民具は、揃っていると空気が伝わる
古民具は、昔の暮らしの道具全般を指します。火鉢、行灯、木箱、そろばん、帳場箪笥、裁縫箱、農具、古い看板、ガラス瓶、竹籠。一点ずつ見ると地味なものも少なくありません。
ただ、同じ家や蔵から出たものが揃っていると、その時代の空気ごと伝わります。近ごろは一点を探している方よりも、部屋の雰囲気ごと揃えたい方が増えていて、店舗の装飾や古民家の再生、撮影の小道具といった先へ渡ることもあります。地味な一点が、揃いの中で生きてくる。そういうことが起こります。
以前、関西火鉢・囲炉裏火鉢・長火鉢を、座卓や座敷机と一緒に拝見したことがあります。火鉢だけが単体で置かれていたら、重たい鉄の器としてしか見えません。座敷の道具が並んだままだったので、どんな部屋で、どんなふうに使われていたかまで読み取れました。状態もきれいなまま残っていたお宅でした。
「こんな古い餅つきの道具、誰か要るんですか」と言われたこともあります。臼と杵です。今はご家庭に残っていること自体が少なくなりました。要らないと決めるのは、まだ早いです。
スタッフのひとこと
「これは要らないと思って先に処分しました」と伺うことがあります。聞けば、揃いの一部だったということも。責める気は毛頭ありません。ただ、迷ったものは残しておいていただけると助かります。仕分けの正解を出すのは、私たちの仕事ですから。
汚れは落とさない
古民具は、使い込まれた木の色味や金属のくすみが、そのまま見どころになります。見た目を整えようとしてニスを塗る、金属を磨く、木を削る。そうすると、古道具らしい表情が消えてしまいます。
手を加えないでください。まとめてお出しになる場合も、状態は自然なままにしておいてください。そのほうが、揃いとしてのまとまりが出ます。
古陶器は「揃い」で見え方が変わる
古陶器で分かりやすいのが、枚数です。染付の皿、印判の皿、豆皿、向付、徳利、猪口。1枚だけだと、飾りの要素が強くなります。5枚10枚と揃っていれば、使う道具として見られます。
同じ柄で枚数が残っているものは、まとめてお見せいただくほうが分かりやすいです。産地や窯がはっきりしない器でも、「同じ家から出た揃い」という事実そのものが手がかりになります。
木箱、包み紙、古い新聞、メモ書き。こうしたものも一緒に残してください。銘がなくても、来歴の見当がつくことがあります。
見落とされやすいのは食器棚
見落とされやすいのは、日常の食器棚です。来客用にしまい込まれた染付の皿、使わないまま重ねられた小鉢、奥の段に眠っている徳利。ふだん使いの器と混ざったまま並んでいるので、片付けのときに中身をあらためられないまま、棚ごと処分の山へ向かってしまうことがあります。
棚ごと見せていただくのが、いちばん早いです。開けたままで構いません。並べ替えも不要です。どの段に何が入っていたかも、実は手がかりになります。
まとまりのままお預かりした品物
当店のブログには、実際の買取の記録が残っています。
たとえば、富貴堂 瑞翔の茶壷・茶筒・銅器をまとめてお預かりした記録です。銅製の茶筒だけで3点。茶入や煎茶の道具も一緒に残っていました。茶筒が1点だけなら、銅の筒として拝見して終わっていたかもしれませんが、ひととおり揃っていたおかげで、この家でのお茶の淹れ方まで見えてきました。
ほかにも、こんな記録があります。
有田焼 松山 山水 茶器セット(急須・湯冷まし・湯呑5客)。器は、客数が揃っていると見え方が変わります。
信楽焼 四代 高橋楽斎 珈琲茶碗 2客(共箱あり)。箱と本体が揃っていた一点です。
時代箪笥(古民具)。こちらは家具ですが、同じ蔵の道具と一緒に拝見しました。
どれも、出てきたときの形のままお見せいただいた例です。
骨董品・古美術品の査定について
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「量が多いほど得」ではない
念のためお伝えしておくと、たくさんまとめれば必ず有利になる、という話ではありません。関わりのないものを寄せ集めても、背景は生まれません。
大事なのは、同じ場所から出た、同じ時代の空気をまとったものが揃っていること。数ではありません。つながりです。ですから、無理に他の部屋のものまで集めていただく必要はありません。出てきた場所ごとに、そのまま見せていただくのが、いちばん分かりやすい形です。
逆に、分けたほうがよいもの
何でもまとめればよい、という話ではありません。
作者がはっきりしている作品、箱書きの明確な茶碗、丁寧に作られた金工品。こうしたものは、一点として見たほうが分かりやすくなりますし、大きなまとめの中に埋もれてしまうと、かえって見落としの原因にもなります。
とはいえ、この判断はご自身でされなくて大丈夫です。全部そのままお見せいただいて、分けたほうがよいものはこちらでお伝えします。
ご相談前の準備は、3つだけ
準備といっても、手を動かしていただくことはほとんどありません。むしろ、やらないでいただきたいことのほうが多いくらいです。次の3つだけ、頭の隅に置いてください。
準備01が、この記事でいちばんお伝えしたいことです。仕分けは、こちらでいたします。
まとめ:背景が見えるまとまりを、そのまま
まとめてお見せいただく価値は、量が多いからではありません。背景が見えるまとまりになっているかです。
押し入れから茶碗が3点、棗が2点、建水が1点。ばらばらに見えても、並べれば茶の道具として伝わります。蔵から帳場箪笥、そろばん、銭箱、古い看板。並べれば、商家の道具として見えてきます。
冒頭の「その分け方、戻していただけますか」も、同じ理由からのお願いでした。きれいに分ける前に、一度そのままお見せください。それだけで、こちらの読み取れることがずいぶん増えます。
よくある質問
名前が分からない道具が混ざっていても大丈夫ですか?
そのままお持ちください。名称や用途の判別はこちらで行います。分からないものを除いてしまうと、まとまりが崩れてしまいます。
箱と本体が別の場所にあります。探したほうがよいですか?
できれば探してみてください。押し入れの別の段や、蔵の棚の上にあることが多いです。見つからない場合も、そのままでご相談いただけます。
数が多いのですが、持ち込むべきでしょうか?
量が多い場合は、出張でのご相談も承っています。無理に運ばず、まずはご相談ください。
汚れているものは洗ってから見せたほうがよいですか?
そのままで大丈夫です。洗浄や研磨で表情が変わってしまうことがありますので、手を加えずにお持ちください。
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